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REPORT
インターネットがなくなる日
コンピュータは空気になる
◆Digital Navigation 1
Web Walker  メンズウォーカー増刊 8.5.2000 角川書店
 デジタル系の株価が乱高下している。勝ち組も負け組もいる。ビジネスの形が定まらず先行き不透明。これでようやくネットビジネスは正常化するそうだ。でもそんな具合に注目されているうちは、インターネットは本物ではない。紙やエンピツのように、当たり前に使われるようになってからが本番だ。
 日本は遅れている。ドットコム先進国のアメリカを追いかけろ。ここ数年、言われ続けてきた。だけど情報社会のモデルは国によって違う。たとえばアメリカはPCの国で、日本はテレビやケータイが好きな国。アメリカはハリウッドがコンテンツを作り、日本はテレビ局やゲーム会社の仕事。
 安けりゃデカくてもいいアメリカは、PCを机に置くインターネットで先行した。他方フリーズ無用で薄くて軽い日本は、モバイルで5年ほど先を走っている。数年もすれば、ケータイとデジカメのセットは、今のテレビ中継車の機能になるとも聞く。歩くテレビ局だ。
 ただ遅れていただけじゃないのね。アメリカと日本とでは好物が違ってたのね。ということがやっと世間で了解されるようになった。情報家電という言葉も定着した。情報家電はポストPCとしてアメリカも躍起だが、日本が世界をリードする可能性が高い。
 形はどうあれ、今後もコンピュータは増え続け、つながる相手も増え続ける。それは言える。リアルな活動がビットに置き換わり、サイバー社会は無限に広がっていく。これがIT革命の意味だ。意味だった。90年代までは。
 しかしITはもう次の新しい革命に向かいつつある。リアルな空間にビットを持ち込むという逆方向の運動だ。コンピュータがバラバラにされ、単機能の部品となって、ばらまかれていく。
 ケータイはPCと融合する。テレビもコンピュータになる。オモチャはマイコンを内蔵し、ロボットペットも飼われはじめた。メモリは服に縫い込まれ、ディスプレイはメガネと同化する。デジタルな現実空間で暮らそう。
 90年代、PCとテレビと電話を統合したものをマルチメディアと呼んだ。21世紀、これを解体する。それが身の回りに溶け込む。全てのモノがコンピュータになる。それらがみなインターネットでつながる。サイバー空間とリアルな空間がつながった惑星ができあがる。マルチメディアの解体というより、分散した巨大なマルチメディア空間というべきかもしれない。
 このときコンピュータは姿を隠し、空気のようになっている。モノどうしが電波をバケツリレー式に飛ばして通信していけば、インフラも要らなくなるかもしれない。ネットワークがなくなる。メディアが消える。手ぶらでかるーく情が通じ合う。誰もデジタルなどという道具のことなど気にしなくなる。ずいぶん未来、それがホントの本番だ。
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