■角川歴彦さん著「人間の証明」。
改めて「人質司法」の恐ろしさ・理不尽さにふるえる。
世界的にも異常な取り調べ、閉鎖・自白主義。国際的にも知られる後進性。
安全、自由、楽しくポップなニッポンだけど、その光の後ろに伸びる刑事司法の闇は、この国の致命的な欠陥。
五輪汚職を巡る身に覚えなき罪を着せられ、怒りと危機感を「人質司法違憲訴訟」というパブリックな運動に転化し、80歳を過ぎて新しい戦いを挑む。しびれる。
収容者の自尊心を奪う拘置所のやり方。外界から遮断する窓。死を覚悟しなければ立ち向かえない。
「被疑者の取り調べ時に弁護人の立ち会いが許されていないのは先進国では日本だけで、中国や北朝鮮と同列にある。」
「起訴する権限を独占する検察の力が強くなりすぎていることが、この国の司法を極端にゆがめている。」
しかも人質司法は「警察・検察・拘置所・裁判所・メディアが一体となって維持されている」。メディア主導の人民裁判であることが、メディア人でもある角川さんには許せない。しかも「人権侵害が横行する根幹には法律に対する私たち収容者の無知がある」。その問題に対しメディアが機能していないのだ。
NHK「虎に翼」、TBS「アンチヒーロー」、貴志祐介著「兎は薄氷に駆ける」。このところ司法を扱うコンテンツが目を引く。人質司法を題材とする作品も心なしか目立つ。社会の問題意識が高まってきた証左でもあろう。
「日本の刑事司法の違法性、後進性はもはや世界に広く知られ、国益を損する事態になっている。政治的にも経済的にも劣化が進んでいる日本で、このままでは倫理的・道徳的にも三流国家になって国際社会から取り残されていく。」
角川さんが私憤ではなく公憤とするゆえん。「検察はやがて自壊の道を歩む」であろうが、それを待つのでは遅い。
堀江貴文さんが収監される直前に、慶応大学の反対を押しのけて授業をお願いし、学生たちとじっくり話を伺ったのは、堀江さんの逮捕・断罪や身柄の取り扱いにぼくが理不尽さを覚えたからでした。
有罪判決を受けた藤井浩人美濃加茂市長に慶応大学の研究員とiUの超客員教授をお願いしたのは、著書「冤罪と闘う」に記す警察・検察・裁判所の闇、というには暗すぎる恐ろしい不正義にぼくが納得いかず、それに闘い続ける姿勢に頭が下がったからでした。
角川さんとは政府・知財本部でご一緒することになったのが縁だから、もう15年です。「クールジャパンつったってみんな洋服じゃないか」というぼくの発言を咎め、「じゃああんたやれよ」とブーメランを返してぼくが和服にさせられたきっかけの一人です。
「もっと仕切らなきゃ」「あんな発言許してちゃダメよ」座長の仕事によくダメ出しされました。公共意識がそびえ立ち、正義感がほとばしる。ありがたくも厳しい国士です。
一方、浜野保樹東大教授に対するわが追悼文を激賞され、「そのあたり本も書いてよ」と出版の機会もいただきました(「コンテンツと国家戦略」)。子どものデジタル創造力を育むNPO「CANVAS」を応援くださり、「デジタルえほんアワード」の審査員も熱く務めてくださった。
描き、目指す世界を同じくする、大先輩かつ恩人であります。
「追悼 マルチメディアと浜野保樹さん」
https://ichiyanakamura.blogspot.com/2014/01/blog-post_6.html
「「コンテンツと国家戦略」に寄せて」
https://ichiyanakamura.blogspot.com/2014/01/blog-post_13.html
堀江さんや藤井さんのような若者も、角川さんのような人生の先輩も、自分が尊敬するかたがコロリと穴に足を取られ司法の闇に沈む。強い力と意志を持つかたでも跳ね返しがたい。
その見えない穴は自分の足元にも恐らくたくさん開いていて、たとえ全く身に覚えがなくとも、いつ落ちるかわかったもんじゃない。落ちた日にゃ無傷でいる力は自分になく、突っ張る意志もくじけそう。
そうコレは、向こうにある公憤じゃなく、いつでも自分を覆いかねない私憤として身構えておくのがよさそうだ。こういうことこそ教科書・教材にして、子どものじぶんから学校で教えておくのがいいんじゃないですか。
角川さんの新しい闘い、ぼくにできる応援を致します。
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